教育講演

教育講演

2017-05-23

後援 : 学校法人大阪滋慶学園 出雲医療看護専門学校、鳥取市医療看護専門学校、大阪医療技術学園専門学校、大阪医療福祉専門学校

1.「発達障害者へのポジティブな行動支援」

会場名 : 第2会場
演者 : 橋本 圭司先生 (はしもとクリニック経堂 院長)
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座長 : 森田愛先生 (学校法人大阪滋慶学園 鳥取市医療看護専門学校言語聴覚士学科 学科長)
講演内容 :
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「発達障害」の概念は時代とともに拡大し、近年は世界的動向にならって自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder: ASD)、学習障害(learning disabilities: LD)、注意欠如・多動性障害(attention-deficit / hyperactivity disorder : ADHD)など、知的障害から独立した高次脳機能障害へシフトした。 発達障害児者への対応の基本は、ポジティブな行動支援である。ダメな療育者の特徴は、1.話が長い、2.言い方が否定的である、3.人のせいにする、などがあるようである。良い療育者の特徴は、1.話が短い、2.言い方が肯定的である、3.人のせいにしない、などがある。また、発達障害児者に見られるよい特徴として、1.真面目である、2.約束を守ろうとする、3.人をだましたりしない、などがある。他方、1.融通がきかない、2.頑固である、3.2つ以上の作業を同時にできない、などの問題がある。 それらの特徴を理解せずに対応しようとすると、「あれもできない」「これもできない」と否定的に評価し、「はダメ」「はしてはいけない」といった指示をしてしまう。このような否定的な指示は、発達障害児者には向いていない。なるべく「できないこと」を責めるのではなく、「できること」を認めてあげる。「はしてはいけない」ではなく、「してはどうだろうか」「してみるといいよ」などというような提案型の支援をして「良い言霊」を発することが肝要である。 成功のコツは、1.健康な身体作り、2.事者の障害(特性)を理解する、3.人(第三者)とつながる、4.当事者の「できる力」を信じる、5.周囲の人の力を上手に借りる、6.完璧を目指さない、7.悩んでいる自分を恥じない、8.自分と異なる考え・価値観に寛容になる、9.悪者探しをしない、など。神の國出雲から、1つでも支援に役立つ「知恵」をお持ち帰りいただければ幸いである。

2.「今、必要な言語聴覚士のリスク管理」

会場名 : 第2会場
演者 : 角田賢先生 (社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 病院長)
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座長 : 佐藤玲子先生 (社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 主任言語聴覚士)
講演内容 :
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近年、我が国の医療は急速な高齢化に伴う疾病構造の変化、技術の高度化、専門分化、病院機能の分化が進んでいます。その中でリハビリテーションの重要性が増しており、その活躍する分野もどんどん広がっています。ICUなどの超急性期、急性期、回復期、そして外来や介護保険分野も含めた生活期の全てのステージでリハビリテーション専門職種が活躍する時代となりました。しかし、患者さんが抱えている問題はリハビリテーション対象疾患だけとは限らず、言語聴覚士が対象とする疾患では高齢者が多いこともあり、複数の疾患、問題を抱える例が少なくありません。そういった患者さんが言語聴覚室の中で急変を起こす可能性は決して低くはありません。また言語聴覚士が関わる分野の一つである嚥下障害は、それ自体が呼吸障害のリスクであり、それに対する検査、訓練そのものが肺炎の原因ともなりかねません。リスクマネジメントは、将来起こり得る危機、危険を予め想定し、起こった場合の損害を最小限に食い止めるための手法と定義されています。我々医療者にとってのリスクマネジメントの基本は、第一に患者さんの全身状態、原疾患の管理状況、合併症の状況を把握して、未然にその危険を防ぐこと、第二に万一の急変の際の適切な対応、処置方法について予め準備しておくことと考えます。医療行為はその全てにおいてある一定のリスクの下に行われます。リスクを過度に恐れて、何もしないということでは、リハビリテーションそのものが成立しません。そのリスクと得られるベネフィットのバランスの上に全ての医療、リハビリテーションは成立しています。そのリスクを理解した上でどうやってコントロールしていくかが今後より一層重要となっていくことは確実でしょう

3.「吃音臨床300例を経験して分かったこと
-吃音臨床を始める人に必要なものとは?-」

会場名 : 第3会場
演者 : 菊池良和先生 (九州大学病院 耳鼻咽喉科)
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座長 : 高松光雪先生 (学校法人大阪滋慶学園 大阪医療福祉専門学校 言語聴覚士学科 学科長)
講演内容 :
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吃音は2歳から4歳の間に5〜11%に発症し、3年で男児は6割、女児は8割自然回復する言語障害・発達障害である。その高い自然回復率から「そのうち治る」「意識させないように(触れないように)」とアドバイスしたり、言語聴覚士は「担当している間に、吃音を治さないといけない」と思い込んでいるのは、間違いである。言語の専門家として、「治らない吃音にどう向き合っていけばいいのか?」を親・本人と一緒に考えることが必要である。 吃音だけが、特別な疾患ではない。実はメカニズムとしては、パーキンソン病と類似している。また、支援、セラピーの考え方として、嚥下障害、失語症、構音障害などと共通する部分があり、今まで吃音臨床をしたことがない方にも分かりやすく、興味のあるお話をしたい。吃音臨床のポイント1.親(特に母親)は、吃音の正しい情報を知りたいから、相談に来る(必ずしも、治してほしいとは思っていない)。2.180度変わった吃音の原因論、治療論を知るだけで、頼れる専門家となれる。3.吃音の4割は、初対面ではどもらない(ように見える)。「軽い吃音」は禁句。4.吃音を治せるエビデンスはない。治る子は治るし、治らない子は治らないものである。5.母親の成長段階の目標を知り、親の役目を伝える。6.吃音の自然経過を知ると、見通しを伝えられる。7.吃音相談の半数以上は、中学生以上である。8.中学生以上の半数は、対人恐怖症(社交不安障害)を合併するため、その予防が幼児・学童で必要である。9.過去を癒し、未来に備え、今を生きる力を育てる。<参考書籍>・菊池良和、子どもの吃音 ママ応援BOOK、学苑社・菊池良和、小児吃音臨床のエッセンス—初回面接のテクニック−、学苑社・菊池良和、エビデンスに基づいた吃音支援入門、学苑社・菊池良和、吃音のリスクマネジメント−備えあればうれいなし—、学苑社

4.「発話障害の評価と訓練
-STは何が出来るか、何をすべきか―」

会場名 : 第2会場
演者 : 熊倉勇美先生 (医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院 顧問)
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座長 : 原順子先生 (学校法人澤田学園 松江総合医療専門学校 副校長)
講演内容 :
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脳血管障害や神経・筋疾患、頭部外傷などに起因する「発話」に何らかの障害を持つ患者の割合は多い。ここで言う「発話」とは、呼吸・発声・構音・共鳴・prosody などを指している。私のこれまでの臨床を振り返ってみると、近年は発話障害の原因、また背景には、失語を含む高次脳機能障害、認知症などのほか、頭頸部がん、呼吸器のがんなどの悪性腫瘍の治療歴や、高齢化といった条件がいくつも重なるなど、STのカバーする領域は時間軸、幅ともに拡がっているように感じられる。これにしばしば「摂食嚥下障害」が重なるのであるから複雑である。私たちは、これまで半世紀近くをかけて、発話の障害に対応すべく、いくつかの検査法、訓練マニュアル、さまざまな訓練教材を作り上げて来た。しかし、手元にある検査法で簡単にプロフィールが描け、問題点の抽出が出来ること、潤沢にある訓練教材を使い、訓練の実施が可能であること、良いと思われることは、全て実施することなどを続けているうちに、オーソドックスな1)評価・鑑別診断、2)仮説の設定、3)訓練の実施、4)仮説の検証というステップを踏むことを忘れてはいないだろうか。前述したような複雑な問題を解き明かすSTの高度な鑑別診断、評価の能力、さらに患者・家族のニーズに対応する的確な臨床能力が求められる中で、いよいよ、これから私たちSTの真価が問われていると思う。私は、2014年の本学会シンポジウム「構音障害(成人)の言語聴覚療法」において、成人の発話障害例を取り上げ、その評価・分析、具体的な言語聴覚療法と問題点などについて報告し、いくつかの提案を試みた。今回は症例報告を交え、発話障害の評価と訓練をめぐって、STは何が出来るか、何をすべきかについて論じたい。

5.「地域に開かれ、愛され、信頼される言語聴覚士への道
-創業2年目の言語聴覚士の立場より-」

会場名 : 第2会場
演者 : 中村太一先生 (コミュニケーション・デイサービス 言の葉 代表)
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座長 : 門脇康浩先生 (一般社団法人山陰言語聴覚士協会 島根県言語聴覚士会 会長/
学校法人大阪滋慶学園 出雲医療看護専門学校言語聴覚士学科 学科長)
講演内容 :
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平成28年1月に会社を設立し、同年4月からは地域密着型通所介護を開所し、まさに今大会のテーマである「地域に開かれた、地域に愛される、地域に信頼される」事業所を目指して日々奮闘中である。 起業するということは、言語聴覚士としての軸足を地域に据えるということである。地域に軸足を据えて見えてきたことは、私が思っていたほど地域は言語聴覚士を求めていないという事実であった。リハビリテーションという言葉すら飛び交うことが少ない。当たり前ではあるが、若者から高齢者まであらゆる世代が地域で共に暮らしている。そして、そこには、自治会、PTA、公民館、NPO、老人クラブ、民生・児童委員、商店などが存在する。暮らしている人々の一般感覚は生活が第一であり、言語聴覚士について考えることは滅多にない。 地域に開かれるとは、自分からそのような中に飛び込み、ゴミ拾いやお祭り、運動会などの活動を共に行うことから始まる。地域に愛されるとは、そのような活動を一緒に行い、ざっくばらんに世間話ができる、お酒を酌み交わす間柄になることである。地域に信頼されるとは、日常の中から、リハビリテーションに関して何か困りごとがあれば相談されるようになることである。介護予防に向けた言語聴覚士の役割など言語聴覚士は何ができるかだけではなく、地域住民の一人として、言語聴覚士だからこそ、その地域の中で役に立てることはあるかという視点も大切である。近所との付き合い、学校の父兄会での付き合いの、自治会の活動からも私たちの専門性を活かすことができるはずである。所属先としての地域貢献はもとより、自身が住んでいる地域の中で、専門性を活かした貢献の仕方についても考えることが必要なのではないだろうか。私たちが行うプロボノ活動の輪が広がり、その活動が地域に根ざした時こそ、地域に開かれ、愛され、信頼される私たちになっているのではないかと思う。

6.「失語症:文の障害にどうアプローチするか」

会場名 : 第2会場
演者 : 大槻美佳先生 (北海道大学大学院保健科学研究院 准教授)
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座長 : 黒川清博先生 (香川大学医学部附属病院リハビリテーション部)
講演内容 :
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失語症をどういう切り口で見るのかについては、様々な視点がある。例えば、「単語レベル」の障害と「文レベル」の障害という対比でみる視点や、言語の「理解」と「産生」という対比でみる視点もある。‘失語症'と冠された患者において、特殊なタイプ(健忘失語や語義失語)以外は、文レベルの障害は必発とも言える。もちろん、文は単語から成り立つので、個々の単語の意味がわからなければ、文の理解は低下するであろうし、単語の想起や発語に問題があれば、文の産生にも影響が出ることは当然予測される。しかし、単語と文の関係は、このような階層構造のみではない。文が単語と異なる点は、1.長さがあること、2.単語と単語の関係を示すルール(いわゆる文法)があることである。ただし、‘文法'というのは様々な要素から成り立っており、また、その運用には多岐にわたる機能が必要でもあり、様々な機能の複合として考える必要がある。また、3.不完全であったり、省略されたとしても、日常会話の大半が文表現であること、4.文が伝える内容は、単語のような特定の対象や概念よりもさらに広い場面や時間経過、動き、多重のイメージであることなども文の特徴である。本発表では、上記の文の特徴について、言語性短期記憶や作動記憶との関係、語順や助詞の理解/産生と損傷部位の関係、検査における文理解/産生能力と日常会話における文理解/産生能力の関係などを脳損傷者を対象に検討し、「文」の理解や産生を支える機能とその障害機序を、脳機能との関係で整理し、文の障害へどうアプローチすべきかを考察する。

7.「音声訓練-声の衛生と発声法の再学習-」

会場名 : 第3会場
演者 : 渡辺陽子先生 (日本福祉教育専門学校 言語聴覚療法学科)
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座長 : 清水洋子先生 (鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部 主任言語聴覚士)
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音声障害の治療には音声外科と音声訓練とがある。 音声障害は、声帯の質量、硬さ、緊張の変化により声帯振動の異常や声門閉鎖不全が生じた結果、声の4要素に異常が現れたもので、「年齢、性、文化的・社会的背景が同様の人々と異なっている状態」(Aronson)をいう。 音声障害の原因には、発声器官の器質的変化によるものと、機能的要因によるものがある。音声訓練は機能的要因を解決しようとするもので、声の出し方や声の使い方の誤り、特に「発声時の力み」に対して行う。目的は患者の喉頭や声帯の形態、年齢、性など生理学的、解剖学的能力および心理学的能力の範囲内で本人のニードに応じたレベルまで声を回復させることである。しかし、全く正常に戻ることはほとんど不可能である(Bless)。 音声障害の原因疾患の究明と音声症状の種類と程度の判定のために音声検査を行う。喉頭の視診、声の聴覚心理的評価、発声機能検査を初診時はもちろんのこと音声治訓練の度に必ず行う。外科的治療など急を要する症状でないかを確認するためにも重要である。 音声訓練の内容は声の衛生と発声法の再学習である。患者の日常生活での発声行動を改善する方法を積極的に指導する。 声の衛生では、発声における禁止事項と提案事項を説明し、実行させる。(1)声の使い過ぎ、(2)声の出し方、(3)のどの健康、(4)心と体の健康 発声法の再学習では、次の項目について指導する。(1)呼吸と発声の調節、(2)頭頚部の筋緊張緩和、(3)軟起声の学習、(4)声の高さの調節、(5)声の大きさの調節、(6)適切な声門閉鎖の獲得。 音声訓練は少なくとも週に1回行う。音声検査と評価も適宜行い、声の改善度を判定する。適切な訓練が行われていれば効果はすぐに現れる。声に変化がない場合は方法が悪いか、患者が協力していないかであるので検討を要する。

8.「嚥下運動の神経制御機構」

会場名 : 第1会場
演者 : 井上誠先生 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授)
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座長 : 内山量史先生 (医療法人景雲会 春日居サイバーナイフ・リハビリ病院リハビリテーション部 副部長)
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ほ乳類は,生命維持に必要な栄養や水分を口から取り込み,必要に応じて口腔内で処理される.ことに固形物の場合,これを咀嚼によって粉砕し唾液と混ぜ合わせて食塊を形成し,舌による口腔内の移送が行われた後に,嚥下反射が引き起こされて咽頭,食道を経て胃にまで運ばれる.一方,咽頭は気道の一部を構成していることから,嚥下時には食塊が喉頭や気管に落ち込む危険をはらんでいる.このため,嚥下は気道を守る防御反応としても機能しなくてはいけない. 嚥下の複雑さを示すものとして,嚥下運動が反射性にも随意性にも誘発可能であることが挙げられる.嚥下運動を誘発し,またその運動パターンを形成する中心となるのは,脳幹延髄に存在するパターン発生器(central pattern generator, CPG)と呼ばれる神経細胞集団であり,末梢性または中枢性入力によってCPG内の神経活動が開始し,閾値を越えると一連の嚥下運動を発現させる.嚥下咽頭期における筋活動や運動パターンは,一定の範囲では末梢の環境変化に対して高い適応性をもつが,嚥下咽頭期の運動は一旦始まると途中で止められないこと,その運動パターンは嚥下中枢の制御下で随意性のコントロールが困難なことが,嚥下咽頭期障害に対する治療手段の獲得を難しくしている. 近年,咀嚼時には食塊の一部が咽頭に流れ込み,口腔と咽頭で食塊形成が行われていることが明らかとなってきた.咀嚼と嚥下はそれぞれ独立した食塊処理の機能ではないことは,嚥下障害の臨床においても深く考慮されるべきである. 本講演では,嚥下運動に関わる神経・筋機構について,嚥下反射誘発に関わる末梢刺激の受容機構,随意性嚥下に関わる上位脳の局在とその働き,口腔機能が嚥下運動にもたらす影響について,近年の基礎・臨床知見をもとに解説する.

9.「行為と動作の障害:分析のポイント」

会場名 : 第3会場
演者 : 中川賀嗣先生 (北海道医療大学心理科学部言語聴覚療法学科 教授)
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座長 : 立石雅子先生 (目白大学保健医療学部言語聴覚学科 教授)
講演内容 :
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言語聴覚士にとって、患者の呈する失行症状は、失語リハビリテーションに影響する因子として、また患者のADL全体を向上させるための複合的阻害因子として非常に重要であると、演者は推察している。しかし失語だけでなく、失行症状をも呈すると考えられる例で、「失語の影響を排除しながら失行症状を評価する」ことは、しばしば困難な作業となってしまう。一方、失行症状の場合、その本質を見極めるには、一般に患者と向き合ったその瞬間での検討はもちろんのこと、患者の同意を得た上でその場面を動画記録し、その記録に基づいて検討することも重要となる。それは後から見直すことや、他のスタッフと情報を共有することができるからである。本講演では、動作記録を用いて失行症状を評価する、特に「失語を呈する例で、失行症状を評価する」ことを念頭に置いて、その際の留意点を整理したい。第1に、動作記録は基本的要素的動作から始め、左右各手について等網羅的に行う。遂行できた動作も省略せずに記録し、また評価した際の方法(指示や動作条件)がわかるように、指示の様子もすべて記録する。すなわち結果のみの断片的記録にならないように心がける。また感覚障害は動画記録できないため、書面等に別に記録しておくことが必要である。第2に、患者の行為・動作を観察することである。断片的に観察した日常生活場面動作の中にも、失行を疑わせる手がかりが多々みられることがある。本講演ではまず、これらの手がかりについて示す。次に観察された行為・動作障害を生じる、あるいは影響を与える可能性のある失行以外の障害の有無を確認する。また同時に、それらが行為や動作に特異性を持つ障害(失行)なのかを確認することが重要である。本講演ではこれらの評価のポイントを示し、また各動作障害に随伴しやすい言語症状、神経症状を指摘したい。