シンポジウム

シンポジウム

2017-06-19

シンポジウム1
地域包括ケアに求められる言語聴覚士の役割

理学療法士からみた言語聴覚士の役割

演者 : 半田 一登 (公益社団法人日本理学療法士協会)
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言語聴覚士法では、その業務を音声機能・言語機能・聴覚に障害のあるものを対象としており、加えて、診療の補助として嚥下訓練、人工内耳の調整が挙げられています。今回のシンポジウムにあたって、2025年をターゲット年とした地域包括ケアシステムでの言語聴覚士に対する理学療法士としての期待感を述べます。言語聴覚士の業務の中で、地域包括ケアということで着目したいことが二つあります。その一つは「聴覚に障害のあるもの」に対する業務です。聴覚障害と認知症、聴覚障害と社会参加、聴覚障害と転倒、聴覚障害と事故等について、その関係性を科学化することや聴覚障害に対する言語聴覚療法を社会的に展開することが重要と考えています。殊に認知症と転倒骨折は愁眉の課題です。二つ目に嚥下障害があります。肺炎による死亡者数が脳血管疾患を抜いてしましましたが、その多くの方は在宅の高齢者や脳血管疾患患者、あるいはパーキンソン疾患患者です。このことを考えると在宅医療に携わる言語聴覚士の数が少なすぎると思います。まず、量的に増やし、その上で肺炎予防や肺炎の早期発見にその専門性を発揮できるようになることは、地域包括ケアにとって重要なことです。一方、地域包括ケアには医療保険や介護保険も含まれたシステムです。最近の診療報酬や介護報酬の流れのように、在院日数が医療の質の評価の大きな柱となった以上、言語聴覚療法独特の遷延的な対応も確立する必要を感じます。近い将来のために、先駆的にチャレンジする言語聴覚士が多数出現することを期待しております。

地域包括ケアシステム構築の上で、求められる言語聴覚士の役割

演者 : 中村 春基 (一般社団法人日本作業療法士協会)
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この度は、第18回日本言語聴覚学会シンポジウムにお招きいただき有難うございます。さて、地域包括ケアシステムについては、既に十分な説明がなされているので、ここでは日本作業療法士協会の取り組みを紹介し、今後の貴協会の取り組みの参考として頂ければ幸いでる。地域包括ケアの軸足は生活圏域にあり、その目的は自立した生活の継続である。しかし、全国の作業療法士の現状は83%が病院、施設に勤務し、地域、在宅への関与が不十分である。日本作業療法士協会ではこれらへの対応として、都道府県士会長を委員とする47委員会、地域ケアシステム推進委員会、認知症の人の生活支援推進委員会、生活行為向上マネジメント(MTDLP)推進プロジェクト等の活動を通して実践力の向上と派遣等の体制づくりを進めている。因みにMTDLPの基礎研修修了者は16729人、事例検討数3302事例(各士会で実施)、指導者93人となっている(平成28年11月1日現在)。また、MTDLP事例報告の140事例の治療内容をICFの心身機能・構造、活動・参加、環境に分類すると、それぞれ、55件、88件、51件であり、国が求めるバランスの取れた作業療法となっている。協会では更に普及を図るために、養成教育への導入、精神障害や発達障害領域等で活用を図っているところである。加えて、その活動の主体は協会から都道府県士会主導に移行している。以上、協会の活動を紹介したが、最後にそのような作業療法において言語聴覚士にお願いしたいことは、「地域に出てほしい」が一つ、二つ目に「適切なコミュニケーションの共有」、三つ目に「技術移転」である。連携なくして地域包括ケアは存在せず、地域でケアを必要とする全ての方々に、自立支援を一貫して提供するという体制を共に構築して行きたい。いまだ迷走中の地域包括ケアシステムであるが、参加された方々が地域包括ケアの推進の為に、具体的な行動を起こす一助になれば幸いである。

地域包括ケアに求められる言語聴覚士の役割

演者 : 深浦 順一 (一般社団法人日本言語聴覚士協会 /
国際医療福祉大学大学院)
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少子高齢社会を迎えつつある日本は、2014年に医療介護総合確保促進法を制定し、その中で1)新たな基金の創設と医療・介護の連携強化、2)地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保、3)地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化、4)その他(介護人材確保)をあげ、医療法、介護保険法等の整備を行っている。また、介護保険制度の改正では1)在宅医療・介護連携の推進、2)認知症施策の推進、3)地域ケア会議の推進、4)生活支援サービスの充実・強化、そして介護予防の地域支援事業への移行が盛り込まれた。このような流れの中で、地域包括ケアにおける言語聴覚士の役割は、1)急性期・回復期における効果的な言語聴覚療法の提供と在宅生活に向けたマネジメントの充実、2)回復期リハの必要な早期退院患者への効果的な外来・通所・訪問リハビリテーションの提供、3)機能回復と活動・参加へのバランスが取れた取り組み、4)患者・家族と互助団体への支援、5)予防を目的とした地域支援事業への積極的参画と要約できる。急性期、回復期、生活期と分断された取り組みが続いた中で、今こそ急性期から地域における自立した生活を視野においた取り組みが必要となっている。また、高齢社会においては、1)老人性難聴による聴覚障害、2)脳血管疾患等による失語症・高次脳機能障害と運動障害性構音障害や摂食・嚥下障害、3)認知症に伴うコミュニケーション障害、そして4)加齢のみを唯一の原因として生じてきた認知機能、摂食・嚥下機能、コミュニケーション機能の低下に対する取り組みの重要性が増している。しかし、社会からの要請に応えることができる言語聴覚士の数はまだ少なく、その解決は今後も簡単ではない。そこで、関連職種と連携して効果的な言語聴覚療法を提供するために、言語聴覚士には総合的評価力とマネジメント力が求められている。

地域包括ケアに求められる言語聴覚士の役割

演者 : 斉藤 正身 (一般社団法人全国デイ・ケア協会 /医療法人真正会 霞ヶ関南病院)
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団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、地域の特性・実情に応じた地域包括ケアシステム構築へ向けた取組みが進められている。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるようにするためにも、地域によってはできる限り早い時期の構築が求められている。構築の主体は市町村であるが、高齢者に限らず地域住民に対する医療・介護・福祉などのサービスに携わる関係者が連携・協力して包括的に提供することを目指すべきである。そのような視点で考えると、チームアプローチを基本とするリハビリテーション専門職の役割は、単に連携・協力の一員というだけでなく、チーム作りの中心的な役割も期待されている。
介護予防事業等の提供体制を充実させていくためにリハビリテーション専門職とされる言語聴覚士、作業療法士、理学療法士の協力体制が全国的にも進められているところであるが、その中で言語聴覚士の役割として、栄養や口腔ケアに携わる医療専門職との連携も求められていることも周知の通りである。私見ではあるが、専門職集団の中で各々の構成員が自身の専門性をどのように発揮するかを考えるときに、他の専門職の役割や機能を十分に理解して、対象者のニーズに応えることが肝要であると考える。口腔ケアや栄養面に目を向けたときに、歯科衛生士や管理栄養士の役割や職域を念頭におくことはもちろん、チームの中心的な役割を担うケアマネジャーとの連携を決して忘れてはならない。
口腔ケアばかりでなく、コミュニケーション能力に関わる役割は、言語聴覚士の専門性の柱である。その役割を全うするためにも、他の専門職、特に介護専門職への情報提供や助言、そして協働の意識を強く持ってもらいたい。シンポジウムでは、地域包括ケアを推進する立場と医師としての立場から、言語聴覚士に期待することを具体的に述べる。

シンポジウム2
医科歯科連携 最後まで口から食べたい。その思いに応えられる医科歯科連携とは-言語聴覚士の活躍の場を求めて-

最後まで口から食べたい。その思いに応えられる医科歯科連携とは−言語聴覚士の活躍の場を求めて−

演者 : 加藤 武彦 (加藤歯科医院)
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言語聴覚士の全国大会でこのようなテーマでシンポジウムが出来る事を楽しみにしております。本来、言語聴覚摂食嚥下士としての仕事内容のはずですが、言語聴覚士さんにとって未だ摂食嚥下障害の患者さんに一人で立ち向かうことは大変だと思います。そこで、今回のような医科歯科連携という事が求められたのではないでしょうか。摂食・咀嚼・嚥下であって咽頭期だけの障害はそれほど多くないからです。前の摂食嚥下学会会長である金子芳洋先生が会長を退任するときの講演で強く強調されていたのが、摂食嚥下障害のほとんどの場合、口腔の運動障害を伴っており咽頭期に異常が発見されなくても誤嚥が発生するという事です。Feinbergらの研究から大多数の誤嚥の原因は口腔期の機能障害にあったと述べています。卑近な例ですが、私が脳梗塞で入院した当時、軽い嚥下障害があったのですが、私はフレッチャーリズムという完全咀嚼を実践することにより普通食を誤嚥なく食することが出来ました。現実の臨床では、超高齢社会で無歯顎患者の脳血管障害の方にいかに経口摂取を行うかが急性期、回復期の病院などで求められていると思います。私の考えとしても急性期病院でも覚醒があり口腔ケアのしっかりとした条件が整えば、まだ咀嚼という時期でなくても今まで使っていた義歯を口腔に戻す事を提案したいのです。このことにより唾液嚥下などの訓練を通して舌のリハビリテーションや咀嚼筋の廃用を防ぐ事が出来るからです。また、回復期リハビリテーション病院では、胃瘻で退院させるわけにはいかないので、なるべく経口摂取が出来る様に限られた入院期間中に口腔ケア、口腔リハビリを行った上で、噛める義歯の装着をした上で口から食べて退院させる事が求められております。

演者論文 : 口のリハビリテーション事始

言語聴覚士と口のリハビリテーション:医科歯科連携の要として

演者 : 栗原 正紀 (一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院)
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共同演者 : 岡崎 裕香、竹中 千尋、矢野 陽子、浜村 果奈、高石 展仁、栗原 幸子、藤島 美智 (一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院)
講演内容 :
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“口のリハビリテーション"とは「どのような障害があっても、最後まで人としての尊厳を守り、諦めないで口から食べることを大切にする全ての活動」をいう。活動の基本は口の持つ3大機能である(1)呼吸・(2)咀嚼・嚥下、(3)構音を重視することである。具体的には(1)口腔ケア・口腔機能向上の徹底(医科・歯科連携)、(2)栄養管理、(3)廃用症候群の予防(早期リハビリテーションの実施)、(4)徹底したチームアプローチ(多職種チーム医療の実現)、(5)救急から在宅まで継続した支援(機能分化・連携)などが挙げられる。機能分化・連携に基づく地域完結型医療提供体制によって急性期・回復期・慢性期(生活期)の流れの中で適時・適切に栄養管理とリハビリテーションが継続されることで安全・安心な地域生活に戻っていくという、“高度に進歩した急性期の臓器別専門治療が地域生活に着実に繋がる"ことが大切である。つまり急性期は「生活の準備」、回復期は「生活の再建」そして生活期は「生活の維持・向上」「活動・参加」というように“地域医療に生活の視点を組み込む"ことが求められる。この意味で「口のリハビリテーション」では急性期では「口から食べるための準備」として口腔ケアの徹底が重要であり、回復期は「口から食べる機能の再建」を目的とした口腔機能の向上(咀嚼・咬合機能の改善)、摂食嚥下訓練など、そして生活期では「獲得された口腔機能の維持向上」をはかり、口から食べることで栄養管理が可能となるように支援することが重要となる。このためには歯科医師・歯科衛生士を含め多くの専門職によるチーム医療の実現が前提となる。 これからの地域包括ケア時代、言語聴覚士が多職種チームの一員として単に摂食嚥下の専門職としてのみならず、地域生活を支えるリハビリ専門職としてどのような展開を示すかが問われているように思われる。

最後まで口から食べたい。その思いに応えられる医科歯科連携とは−言語聴覚士の活躍の場を求めて−

演者 : 森 淳一 (社会医療法人 敬和会
大分リハビリテーション病院 リハビリテーション部)
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病気や加齢で、食べることもままならず、チューブで栄養の生活が余儀なくされたら、どれほど辛く苦しいだろうか。私だったら生かされているにすぎないとさえ感じるかもしれない。だから、一人でも多く一口でも食べていただけるよう支援したいと考えるのは当然であろう。しかし、食支援は一人の努力だけでは無力であり、この領域に関係するあらゆる専門職が、「寄ってたかって」かかわらない限り、これを実現することは難しい。
長らく回復期リハに携わっているが、摂食嚥下障害の取り組みは、回復期リハ病棟が新設される前から関わってきた。もちろん、その当時から食支援には口腔ケアが大切とされていた。佐々木ら(1991)の不顕性肺炎に関する研究で口腔ケアが注目されるようになり、さらに米山ら(2001)の要介護高齢者施設における2年間の追跡調査で肺炎予防効果が確認された。この頃から高齢者だけでなく病院等における口腔ケアが急速に拡がっていき、機能的口腔ケアや口腔機能向上など口の大切さが現在までずっと叫ばれてきたのである。しかし、現状はどうだろう。意見は様々あると思うが、私は口腔ケアがこれだけ叫ばれている中、まだまだ医療・介護現場などで、口(口腔)が少し忘れられ、後回しになっている気がする。
だからというわけではないが、オーラルリハビリテーション研究会の発足や前勤務地より医科歯科連携の推進に力不足ながら関わってきた。オーラルリハビリテーションとは、「どのような障害があっても、最後まで人としての尊厳を守り、『諦めないで口から食べる』ことを大切にする全ての活動」である(栗原、1999)。内と外をつなぐ境界領域としての口腔器官の特性だからこそ、多くの専門職が関わることを示している。この未成熟なその保健医療介護システムの構築、特に医科歯科連携や多職種連携を通して、私たち言語聴覚士が、いま取り組まなければならないチャレンジと考える。

最後まで口から食べたい。その思いに応えられる医科歯科連携とは−言語聴覚士の活躍の場を求めて−

演者 : 岩田 久義 (社会福祉法人 こうほうえん
錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部)
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【はじめに】山陰地域は、山陰言語聴覚士(ST)協会と地区歯科医師会との合同研修会を度々行なっており、医科歯科連携が比較的行いやすい環境にある。そのような地域にある錦海リハビリテーション病院は、開院当初から医科歯科連携を重視し、言語聴覚士が責任部署となって「口から食べる」を目指す支援を行ってきた。今回は当院の取り組みと共に、全国初の取り組みとなる鳥取県歯科医師会との協働による介護予防事業について紹介する。【当院の取り組み】言語聴覚士は出来上がった義歯しか知らない。その状況下で医科歯科連携はできるのだろうか。私達は歯科との合同研修会を通じて、歯科との距離は近くなったが、現場における歯科領域の理解は不十分であった。危機感を覚えた私達は思い切って直接歯科診療所に出向き、また歯科医師及び歯科衛生士を院内研修会の講師として招き、学んだ。歯科用語や口腔内審査、ブラッシング技術、義歯の見方を知り、訪問歯科診療に立ち会うようにした。互いの専門用語が共通言語になるにつれ、食べるための装具である義歯とリハビリの方向性が一致するようになってきた。接点が少ないと言われる医科と歯科は、互いの立場や役割を理解することで食べるための「チーム」に近づく。【地域での関わり】近年、各地で様々な形式での医科歯科連携が行われている。しかし地域での拡がりはなかなか見えない。地域包括ケアの第一歩として、当院は地域に出たい歯科医を対象とした医科研修会開催の場となり、言語聴覚士も講師を務めた。平成28年度、鳥取県歯科医師会が県下一部市町において高齢者歯科健診事業を開始するにあたり、山陰言語聴覚士協会が取り組みに加わった。地域の後期高齢者に対して、問診、咀嚼機能評価、舌機能評価、嚥下機能評価、口腔内診査などを協働で行う。事前には健診方法の統一を図るための合同研修会を受講した。次年度以降は県下全域に拡がる予定である。地域においても食べることこそ多職種協働である。